粒子画像流速測定法と渦運動エネルギーを用いた回転水槽実験で発生する傾圧不安定波の定量化 << Prev | Index| Next >>

付録1. スピンアップ期間の運動

本付録1では、実験1におけるスピンアップ期間の運動を記述し、傾圧不安定波や蛇行したジェットが発生するまでの時間変化を示す。

図A1.1は、水槽と同じ速度で回転させた高感度カメラで撮影した画像である。傾圧不安定波が発生するまでの期間の、水面の運動に対応したアルミ粉末分布の変化が確認できる。

PIV解析を行うことにより、この画像から水面の運動を把握する。図A1.2、図A1.3、図A1.4は、図A1.1と同じ時間から得られた水面の運動ベクトル、速度分布、相対渦度分布である。(a)の円盤が回転していない時間では、水面上ではほとんど運動が起きていない。しかし回転を開始すると、外槽と内槽の摩擦により、側壁に接地した端の水だけが円周運動を始める。はじめのうちは側壁から離れた実験槽の中央付近では円周運動は起きていない(図省略)が、(b)の実験開始から約3分を過ぎると、実験槽中央もふくめて、実験槽全体の水面が回転方向と同じ向き(反時計回り)の円周運動をする。速度は、外側側壁で一番大きく約5.0mms-1、内側側壁で約3.0mms-1、中央で約2.0mms-1である。相対渦度場でみると、半径方向の速度差が大きいところで相対渦度は大きく、外側から内側へ低速になる領域では正渦度、その逆の領域で負の渦度が分布している。

(c)の実験開始から約4分後、円周運動はくずれ始める。3方向の約6.0mms-1の速度の大きい領域が外側から内側へ拡大する。その後面では、速度の小さい領域が外向きにのびている。(d)の実験開始から5分30秒後、高速度の領域は蛇行しながら1つにつながり、ジェットや傾圧不安定波は発生する。実験開始から約7分後、波数3の蛇行したジェットの構造は、その後約20分間変わらず、定常状態になったといえる。

この定常状態に至るまでの期間、つまりスピンアップの時間が、理論的に一致するかどうか調べる。回転数からエクマンパンピングの量を見積り、その水が一回転する時間を算出した。すると、スピンアップ時間Tは、T=2H / (f x He)、Hは層の厚さで実験1の場合0.02m、fのコリオリパラメタは回転速度6rpmの場合は約0.6s-1である。Heはエクマン層の厚さは、水ということで1伉度を考える。計算するとT=約60s。つまり、理論上1分以上はスピンアップに要することになる。実際の実験では約7分かかっているが、オーダーとしては妥当といえる。

第3.2節の図3.6で紹介した運動エネルギーの時間変化は、スピンアップ期間での変化も示している。回転を初めて120秒までKEとMKEが急増化している。実験開始後からしばらくは慣性が顕著に働き、実験槽内の流体は運動をしない。そのため、撮影された動画では回転方向の逆向きに運動しているように見える。この見かけ上逆向きの運動が起きることで、KEやMKEが大きくなる。実験開始から約3分が過ぎると、実験槽全体の水面が回転方向と同じ向き(反時計回り)の円周運動を始めるため、いったん見かけ上の反対向きの運動がほぼ止まり、KEとMKEはゼロとなる。その後、軸対象運動が卓越するためKEとMKEが増加する。そして、数十秒後に傾圧不安定波が発生することに伴いEKEが増加する。

(a) (b)
(c) (d)
図A1.1: 高感度カメラで撮影された画像。(a)回転開始30秒前、(b)回転開始200秒後、(c) 266秒後、(d)330秒後。
(a) (b)
(c) (d)
図A1.2: 図A1.1の時間の流線分布。
(a) (b)
(c) (d)
図A1.3: 図A1.1の時間の速度分布。単位はmms-1
(a) (b)
(c) (d)
図A1.4: 図A1.1の時間の相対渦度分布。単位はs-1

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