F. 暴走温室状態の大気構造

3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 F.d. 熱的南北構造 F.f. 擾乱の特徴

e. 南北エネルギー輸送

実験 S1800 における乾燥静的エネルギー, 潜熱エネルギーの南北輸送量を 図 1 に示す. 繰り返すようにこの場合では定常状態にないので, この図で 示される収支には残差が存在する. つまり, 大気が加熱される分, 水蒸気が 大気中に蓄積される分が残るわけであるが, 平衡状態との相違を見るため示 しておくことにする.

エネルギー輸送量を比較すると, 乾燥静的エネルギー輸送に比べ 潜熱エネルギー輸送の方が大きい. この結果は, 実験 S1570 の場合と同様である. 平衡状態と大きく異なる点は, エネルギー輸送量分布の南北非対称性が顕著 となる点である. 輸送量の内訳では, 平均子午面循環成分が卓越している. 中緯度の擾乱については, 傾圧不安定による擾乱なのか, あるいは CISK に よって駆動される擾乱なのか, その実態は明らかにされていない

(a) figure1(a)

(b) figure1(b)
図 1: 実験 S1800 における南北エネルギー輸送. (a): 乾燥静的エネルギー輸送. (b): 潜熱エネルギー輸送. 赤線が全輸送量, 青線が平均子午面循環による輸送, 緑線が停滞性擾乱による輸送, 薄茶線が移動性擾乱による輸送を表す. 単位はいずれも W.


F.e. 南北エネルギー輸送 3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 F.d. 熱的南北構造 F.f. 擾乱の特徴