d. 熱的南北構造
図 1 に東西平均表面温度の南北分布を示した.
平衡状態の結果と比較してピークが中緯度に位置している点が大きく異なっている.
暴走温室状態では表面温度分布も激しく時間変動しているので,
この図は平衡状態とは異なり必ずしも赤道で表面温度が
最大にならないことを示している. この図における南北温度差は 6.5
K となり非常に小さくなっている. 図 2 にエネルギーフラックスの南北分布を示す. 地面収支は, 実験 S1570 の結果を非常に極端にしたものであると言え る. すなわち, 大気が光学的に厚くなるため表面放射フラックスはほとんど 0 に なり, 入射量のほとんど全てが蒸発フラックスの形で大気に出ていく. 中緯度に比べて赤道の温度が低くなるのは, 蒸発による冷却効果が赤道におい て非常に大きくなるためであると思われる. 顕熱フラックスはほとんど 0 であり, 高緯度でわずかに負になる. つまり, 高緯度域では大気が表面を加熱している. 大気におけるエネルギーフラックスでは, 降水の 3 つのピークが目立つよう になる. 特に, 赤道における降水量の増加が激しく, 約 30 mm/日の雨が降る. 極域でも降水が起こり大気を加熱する. OLR は 実験 S1570 の場合と同様ほとんど平らになる. その値は 330 W/m2であり, 相対湿度を考慮した 1 次元平衡解の高温極限における OLR の値と ほぼ一致している. |
図 1: 実験 S1800 における表面温度南北分布. 870 日から 920 日までの時間平均を示す. 単位は K. |