D. 減衰1層の場合の結果

3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 D.c. 平衡状態:エネルギーフラックス南北分布 D.e. 暴走温室状態

d. 平衡状態:南北エネルギー輸送量

図 1 および図 2 に乾燥静的エネルギー cpT + gz, 潜熱 Lq の南北輸送量を示した. 乾燥静的エネルギー輸送量の分布(図 1a)では 緯度 10 度付近に鋭いピークを持つように見える. これは, 現実の地球と比べて (Masuda, 1994) 10 度よりも高緯度側のエ ネルギー輸送が非常に小さくなってしまっているためである. 特に, 中高緯度における擾乱による輸送量は地球における値の 1/3 程度 である. この欠点は, モデルが傾圧不安定を正しく表現しきれて いないために生じていると予想される. この予想を確認するためには高分解能計算を行なってみなければわからないの で, 今後の課題として残しておくことにする.

潜熱輸送量(図 2a) については, 緯度 20 度付近と緯度 40 度付近にピークが存 在している. 低緯度域のピークは赤道への水蒸気収束が表現されたものであり, 現実の地球と似たパターンを示していると言える. また, それぞれのピークの値も地球における潜熱輸送量と同程度になっ ている.

フィルター・減衰層を導入した場合には, ハドレー循環域域内の 乾燥静的エネルギー輸送量(図 1b)が大きく減少する. 潜熱輸送(図 2b)においても熱帯における赤道向き輸送量が減少し, 全体では緩やかな山形のパターンとなってしまう. これらの不都合は, これまでに述べてきたようにハドレー循環が弱くなって しまうことによってもたらされたと考えられる.

  (a) figure1(a) (b) figure1(b)

図 1: 乾燥静的エネルギーの南北輸送量分布. (a) はフィルター無し・減衰 1 層の場合, (b) は実験 S1380(全層にフィルター導入・減衰層 7 層). 赤線が全輸送量, 青線が平均子午面循環による輸送, 緑線が停滞性擾乱による輸送, 薄茶線が移動性擾乱による輸送を表す. 太陽定数は S=1380 W/m2. 単位はいずれも W.

  (a) figure2(a) (b) figure2(b)

図 2: 潜熱エネルギーの南北輸送量分布. (a) はフィルター無し・減衰 1 層の場合, (b) は実験 S1380(全層にフィルター導入・減衰層 7 層). 赤線が全輸送量, 青線が平均子午面循環による輸送, 緑線が停滞性擾乱による輸送, 薄茶線が移動性擾乱による輸送を表す. 太陽定数は S=1380 W/m2. 単位はいずれも W.


D.d. 平衡状態:南北エネルギー輸送量 3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 D.c. 平衡状態:エネルギーフラックス南北分布 D.e. 暴走温室状態