圧力断面極小旋回法 (5) 一様等方乱流における低圧力旋回渦の同定と可視化 Previous 圧力断面極小旋回法 (6)
図3 のアニメーションでは、t = 144 において抽出された 全渦軸を黄色の細線で、代表的な13個の渦芯を色つきの等値面で表したものを 視角を連続的に変えて見ている。 これは、エンストロフィー密度の等値面の複雑さから、乱流が十分に発達した状 態になっていると判断される時刻で、エンストロフィーが最大に達する時刻 のほぼ2倍弱の時間が経過している。 この時刻での乱流レイノルズ数は Rλ= 46 である。 細長い管状の渦構造が、渦軸のまわりに形成されているのが観測できる。 すべての渦芯についてその断面の径の統計をとると、コルモゴロフ長のおおよそ 8倍のまわりに分布している [7]。 これは、別の方法で求められた管状渦の径の大きさと同程度で ある [9, 10]。 全ての渦芯を同時に描くと、空間を埋め尽くしてしまい、 個々の管状渦が隠れて見えなくなるので、 この図では、任意に選んだ少数個の渦芯のみを表示している。 このような少数個の渦の表示が可能となるのは、 圧力断面極小旋回法では、渦を個別に識別できるからであり、 渦度の等値面表示などではこのようなことができない。 r128y.gif (23560 バイト)

図3: 格子数 1283 の数値計算で実現される渦軸と渦芯 (movie:  AVI/ QuickTime)

ここで、低圧力旋回渦の渦芯が、回転中心軸に対して相対的な速度場の 構造で定義されていることを強調しておく。 このため、ある渦の中心から見て旋回渦の一部になっている点が、他の中心 軸(あるいは他の平面)から見たときには旋回渦には見えない場合がある。 これは、その流れ場が一つの渦には旋回運動を生じるように作用するが、他 の渦の回転には直接には寄与していないということを意味している。 逆に、ある点での流れが、複数の中心軸から見たそれぞれの旋回渦の一部と して認識されることもあり得る。 これは、ある一点での流れが複数の渦の回転に寄与することを意味している。 このどちらも、我々の渦の定義からは自然な結果であり、特別な処理を必要 とはしないが、渦領域に含まれる総体積を計算する場合には、お互いに重なり あった領域を二重(多重)に計算しないように注意しなければならない。

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