圧力を小さい値から徐々に増加させた等値面と渦軸との比較を 図5 にアニメーションで示す。 等値面の白い面は高圧側、灰色の面は低圧側を表す。 低圧力領域による渦の可視化は、従来から、 実験でよく用いられてきているものである [16]。 圧力のしきい値を最小値から増やしていくと、 最初、画面中央奥の渦軸のまわりに等値面が現われる。 この面は、現われ初めは球形に近く、圧力の値を上げていくにつれて 渦軸に沿うように広がり、次第に管状構造に近い様子を呈してくる。 しかし、明瞭な形状を示さないまま他の等値面とつながってしまう。 この最初の等値面に少し遅れて、右上部の淡青色の渦軸のまわりに新たな 等値面が見え、それに続いて複数個の管状の等値面が現われてくる。 ここで留意したいのは、最初に等値面が現われたのが旋回の弱い(濃青色 に近い)渦軸のまわりであり、構造が必ずしも管状とは断じ難い点である。 上述の右上部の淡青色の渦軸まわりの等値面の場合にしても、渦軸が淡青色 (強い渦)の部分よりはむしろ濃青色(弱い渦)に近い部分から先に等値面 が現われており、渦の旋回の強さとは必ずしも対応がついていない。 さらに、管状の等値面の中心部には渦軸が見られるが、等値面の外に存在する 渦軸も非常に多いことに注意したい。 圧力の値が上がるにつれて、等値面が覆う領域はますます広くなり、 ついには一つの等値面 の中に複数本の渦軸が含まれるようになる。 ここに至っては、等値面が覆う領域はあまりに広く、管状渦構造の同定という当 初の意義は失われてしまう。
以上の解析から、圧力の等値面で 渦芯を定義する場合の最も大きな難点は、圧力の低下が必ずしも渦の存在と直結 しないという点であることがわかる。 圧力の等値面によって可視化されるのは、強い渦が背景圧力の比較的低い領域に 存在する場合に限られる。 渦が弱い場合は圧力の低下も小さいため可視化されないし、逆に、 強い渦の旋回によって圧力の低下が起きる場合でも、 もし背景がたまたま高圧であれば、等値面は現れない。 このアニメーションで淡青色の渦軸より濃青色の渦軸に等値面が先に現われるの は、この背景圧力の影響である。 |