座談会「流体力学の基礎教育」

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〔巽〕:うまくいくかどうか分からんのですが, 一つ簡単な実験をお目にかけます. 紙を短冊形に切って, 面を垂直にして落としますと, 紙は鉛直にすとんと落ちないで回転を起こすのです. ほらほら.
 この現象は, 今世紀の初めから知られていたことで, オートローテーション (自動回転) と名前がついているんです. 私はいま, 手元の紙を切ってやりましたけれど, 例えば, カッターで紙を切るときの切れ端でも, 下に落ちるときに, すとんと落ちないで, きりきりきりと回転しながら斜め方向に行くんですよ. 私の友人が, 「日常現象の辞典」 みたいな本を書いていまして, この現象の説明はこれでいいかという問い合わせがあったので, はじめてこの現象を知ったのです. そんな説明はあかんと言いましたら, 今井先生のところにも相談したらしいのです. 結局, 完全流体の非定常ポテンシャル運動で説明できるということになりました.
 短冊の面を鉛直に持って落としますと, 最初はこう落ちますね. だから, 普通なら水平に進む翼が, 鉛直に進むと思ったらどうでしょう. そうしますと揚力が働き, それに揚力による回転モーメントが働きますから, それで回転が起こる. 一たん回転が起こってしまってからは, そんなに複雑な宙返りではなくて, ほんとうに一つの軸の周りの回転で, その軸が斜めの線上を平行移動している. そんな運動でしょう. そんな高級な宙返りじゃないですよ. これは, 完全流体の中の非定常運動の一つの典型例かと思います.
 ほら, こんなに綺麗にいくんですよ.


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