付録B:線形化と関数展開 熱フラックス固定境界条件での回転円筒内の熱対流

独立変数  ψθ が微小であるとして線形化し, 安定性解析を行なう.  ψθ を境界条件を見たす次のような関数系で展開する.

   $\displaystyle\psi = \sum_{n=1}^{\infty}

\tilde{\psi}_n \sin n\pi z \exp{i(kx-\omega t)},$ (5)
   $\displaystyle\theta = \sum_{n=0}^{\infty}

\tilde{\theta}_n \cos n\pi z \exp{i(kx-\omega t)}.$ (6)

線形化された(2)に ${\displaystyle \int_0^1 dz \cos m\pi z}$, (1)に ${\displaystyle \int_0^1 dz \sin m\pi z}$ をそれぞれ作用させると,  ωを固有値とする, $(\tilde{\psi}_n, \tilde{\theta}_n)$ に関する 無限次元の固有値問題の方程式が得られる.

\begin{displaymath}

 \left( 

 \begin{array}

{cc}

 [i\omega K_n^2 - i k \eta - K_...

 ... \tilde{\psi}_n \  \tilde{\theta}_n

 \end{array}\right) = 0,

 \end{displaymath} (7)

ここで <..|..> は $\sin n\pi z,\cos n\pi z$ の 内積を表しており, それぞれ ${\displaystyle <C_m\vert C_n\gt \equiv \int_0^1 \cos m\pi z\cos n\pi z}$, ${\displaystyle <C_m\vert S_n\gt \equiv \int_0^1 \cos m\pi z\sin n\pi z}$, ${\displaystyle <S_m\vert C_n\gt \equiv \int_0^1 \sin m\pi z\cos n\pi z}$, ${\displaystyle <S_m\vert S_n\gt \equiv \int_0^1 \sin m\pi z\sin n\pi z}$ である. $K_n^2 = k^2 + n\pi^2$n 次の鉛直モードに対する全波数 の 2 乗である.

さらに解析的に進めるために 以下では(7)を 鉛直波数 1 までで切断した系で考察することにする. この切断により, 固有値および表現される固有関数の構造は正しい解とは 定量的なずれが生じるであろうが, 定性的な性質はそのまま保持されていると期待する. (7)は,

\begin{displaymath}

 \left( 

 \begin{array}

{cc}

 i\omega K^2 - i k \eta - K^4

 ...

 ... \tilde{\psi}_1 \  \tilde{\theta}_0

 \end{array}\right) = 0,

 \end{displaymath} (8)

となる. ここで $K^2 \equiv K_1^2 = k^2 + \pi^2$ は 1 次の 鉛直モードに対する全波数である. この係数行列式から分散関係を定める式が得られる.

\begin{displaymath}

 PK^2 \omega^2 + [-k \eta P + i(PK^2 + k^2) K^2]\omega

 + ( -ik^3\eta - k^2K^4 + 8k^2R/\pi^2 ) = 0.

 \end{displaymath} (9)

中立曲線および臨界状態を求めるために,  ωを実数と 仮定する. (9)の虚数部より 中立モードの振動数が得られる. 

\begin{displaymath}

 \omega = \frac{\eta k^3}{(PK^2+k^2)K^2}.

 \end{displaymath} (10)

この式を(9)実数部に代入して, 中立曲線の式が得られる.

 \begin{displaymath}

	    R = \frac{\pi^2}{8}

	     \left[K^4 + \frac{P^2\eta^2k^2}{(PK^2 ...

	      ...ight)^2

	       \frac{k^2}{(k^2 + \frac{P\pi^2}{P+1})^2} 

	        \right]. 

		 \end{displaymath} (11)

付録B:線形化と関数展開 熱フラックス固定境界条件での回転円筒内の熱対流