Dowling (1988) によれば, 回転系の対流セルの水平スケールは 回転軸が鉛直方向では横長とはならない. しかしながら, 回転軸が水平方向の下での対流セルは横長となる 結果が本研究において得られた. これら 2 通りの回転系の差異は, それぞれの系に存在しうる波の性質で定性的に理解される. 回転軸が鉛直方向を向いた系に存在する波は慣性波である. その分散関係は,
(14) である. ここで m は鉛直方向の波数である. 振動数の大きさが波をもたらす復元力の大きさの指標であるから, 振動数が大きければ対流運動を妨げる方向により強く働くであろう. 慣性波は k → 0 において, 振動数が ω→ 2Ω となる. したがって, 振動数が 0 とはならないので, 水平波数 0 の対流運動を妨げる. 回転がある程度大きくなれば, この効果が現れて 水平波数 0 が臨界モードとはならなくなる.
一方, 回転軸が水平方向を向いた境界面が傾いている系に 存在する波はロスビー波である. その分散関係は,
(15) である. ロスビー波は k → 0 において, 振動数が 0 となってしまうので水平波数 0 の対流運動を妨げない. したがって回転を大きくしても水平波数 0 の運動へは影響がないので 常に k = 0 が臨界モードとなる.