粉体層上の動摩擦係数測定実験とその流体力学的考察

考察 4 実際の岩屑なだれへの適用

この「動圧モデル」が実際の岩屑なだれに対して現実的なモデルであるかを、1980年のセントへレンズ山での岩屑なだれの観測事実をもとに検証してみる。セントへレンズの実際の岩塊の直径は1m〜170mと様々であり(Voight et al., 1981)、また、岩屑なだれの供給源の平均密度は2.31×103kg/m3、岩屑なだれ堆積物の平均密度は 1.85×103kg/m3である(Glicken, 1998)。

このことから動圧モデルでの剛体の高さおよび密度をそれぞれ、100m、2.31×103kg/m3とし、粉体の密度を1.85×103kg/m3とすれば、浮上臨界速度は49m/sとなる。セントへレンズ山での岩屑なだれの平均速度が35m/s、最高速度で70m/sであったこと(Voight et al., 1983)を考えれば、動圧モデルから求められる浮上臨界速度は、現実の岩屑なだれに対しても現実的な値をとるといえよう。


粉体層上の動摩擦係数測定実験とその流体力学的考察