全面にプレートを覆った場合の数値計算と理論的な考察により, プレートの存在する場合には存在しない場合と比べて 流体の平均温度が上昇することが示された. このようなプレートの存在による熱的な効果が プレートが流体層の一部分しか覆わない場合にも同様に働けば, プレートの下と外側とで水平温度差が生じることになり, この温度差が新たな流れを引き起こすと考えられる. 図6より, レイリー数が大きくなるほどプレートの下と外側の温度差が大きくなるので, レイリー数が大きくなるほど この温度差が引き起こす流れの寄与が大きくなるだろう. 数値計算において, 対流セルのアスペクト比が レイリー数が 104 の場合と 105,106 の場合に大きく異なっていたのは, この水平温度差の及ぼす影響の程度が違っているからではないかと 我々は推測する. 以下では, この水平温度差の影響の大きさを見積もることで, 対流セルの水平スケールについて議論してみる.
図 7: 対流の成長過程の概念図.
そのために, 対流セルの形成について次のようなシナリオを考えてみる.
- 初期には鉛直方向の温度差により 対流(鉛直対流)が成長をはじめる.
- 流体層上部にプレートが存在することにより, 対流の成長にともなってプレートの下とプレートの外側で 温度差が形成される. この水平方向の温度差が初期の鉛直対流とは 別の新たな流れを引き起こす.
- この引き起こされる流れの水平速度 uh が 鉛直対流としての水平速度 u, u' よりも 大きくなった場合, もともとの鉛直対流のセルは水平温度差による 流体運動により壊されてしまうだろう.
- 反対に, uh が u, u' よりも 小さい場合には, 鉛直対流のセルは壊されることはないだろう. この場合には 水平温度差による流れが対流パターンに影響を及ぼすことがなく, 横長な対流セルが出現しないだろう.
このシナリオに基づくと, 対流計算結果でのレイリー数が 105, 106 の場合の横長な対流セルは, プレートの存在によって形成された温度差が引き起こす 流れが大きい状態 (uh > u,u') であり, レイリー数 104 の場合のアスペクト比 1.5 程度の対流セルは, プレートの存在によって形成された温度差が 引き起こす流れが大きくない状態 (uh < u,u') であると考えられる.