3. 結果 |
3.4 ポアンカレ断面図
準周期解においては、渦とともに回転する座標系で見ることによってポアンカレ断面図を つくることができる。 数点の粒子の軌跡を長時間にわたって計算し、渦の形の周期変動の1周期ごとでの位置を 1つの図に重ねあわせてゆく。図4はそのようにして作成したポアンカレ断面図である。 極渦の外側に12点(a)、内側に19点(b)置き、1000周期分の計算をおこなった。
図4: 準周期解についてのポアンカレ断面図。(a)極渦の外側の粒子と、(b)内側の粒子。中心が極で、緯度線は60度と30度。同一粒子が不規則に分布しているところがカオス混合領域、 閉曲線上に規則的な軌跡が描かれているのが不変トーラスの領域である。 このトーラスの領域では水平シアーによる引き伸ばしはおこっていても、混合は起きていない。
極渦の外側(a)では、中緯度にカオス混合領域が存在し、 その両側に不変トーラスが閉じたループ状になっている。 内側のほうのトーラス(青点線)は極渦の縁にあたるPV勾配の極大域に対応している。 そのすぐ赤道側にもう1つの細長い三日月型のトーラスが存在する(赤線)。ムービー1で見られた、混合障壁と極渦の縁の10度程度のずれは、この三日月型のトーラスの存在と直接対応している。
極渦の内側(b)にもカオス混合領域が存在し、そしてより複雑な構造をもった不変トーラスがいくつも存在する。 ムービー1に見られた粒子が入らない領域のうち、三日月型の領域はこのポアンカレ断面図のよく似た形のトーラスに対応しているが、もう1つの極付近の三角形型の領域は、 ポアンカレ断面図ではカオス領域と3種類の不変トーラス
(1) 極渦の中心付近(緑の実線)
(2) それを囲む3つの「島」(赤線)
(3) さらにそのすぐ外側にある、4つの小さい「島」
にわかれている。これらはPVの勾配の大きなところと一致せず、極渦の縁とは異なったタイプの輸送障壁であるといえる。