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: 5.4 エネルギースペクトル : 5. 統計量による解析 : 5.2 秩序渦半径と循環について

5.3 エネルギー変化について

秩序渦とフィラメント構造の持つエネルギーの時間変化を見るために 秩序渦の表面を定める。これを境界として その内側と外側における平均流成分と乱流成分のエネルギーを調べ、 異なるスケールの渦構造間のエネルギーの移動について調べる。

秩序渦構造を分ける境界として、流れ場から $\left\langle{\omega_z}\right\rangle (r)$を計算し、 式(6)のフィッティングで求めた値$r_0(t)$を用いる。 これを基準として渦核内部領域$V_c$を中心軸からの距離が$r\le r_0(t)$の範囲とし、 渦核外部領域$V_e$として $r_0(t)<r<3r_0(t)$とする。

$V_c$及び$V_e$における平均流のエネルギーをそれぞれ$E^O_c(t)$$E^O_e(t)$とし、次の様に定義する;

\begin{displaymath}
E^O_i(t) \equiv \int_{V_i} \frac{1}{2}\vert\left\langle{{\mathbf u}}\right\rangle (r)\vert^2 {\mathrm d}V.
\end{displaymath} (10)

ここで$i$は積分領域を表わし、$i=$c, eである。また $\left\langle{{\mathbf u}}\right\rangle (r)$は速度 場の軸対称成分である。渦核内部領域$V_c$と外部領域$V_e$での積分領域が時間変 化するので、単位体積当りのエネルギーを計算する;
\begin{displaymath}
\bar{E}^O_i(t)\equiv E^O_i(t)/\int _{V_i} {\mathrm d}V
\end{displaymath} (11)

速度場がLamb-Oseen渦の場合、これらの値は時間に対して保存する。

同様に、撹乱エネルギー$E^T_c(t)$$E^T_e(t)$を次の様に定義する;

\begin{displaymath}
E^T_i(t) \equiv \int_{V_i} \frac{1}{2}\vert{\mathbf u}({\mat...
...left\langle{{\mathbf u}}\right\rangle (r)\vert^2 {\mathrm d}V.
\end{displaymath} (12)

更に撹乱の成長の異方性を調べるため、 単位体積当りの$V_{\mathrm c}$, $V_{\mathrm e}$での$r$, $\theta$, $z$成分のエネルギーを

\begin{displaymath}
\overline{E}_i^j(t) \equiv \int _{V_i} \frac{1}{2} \left\{ ...
...ngle (r)\right\}^2 {\mathrm d}V / \int _{V_i} {\mathrm d}V \\
\end{displaymath} (13)

と定義する。また$j$は成分を表 し、$j$= $r$, $\theta$, $z$を示す。 $\left\langle{u_j}\right\rangle (r)$$u_j$の軸対称成分で ある。

12は、渦核内部領域$V_c$における単位体積当りの 平均流エネルギー $\bar{E}^O_c(t)$と、撹乱エネルギー $\bar{E}^T_c(t)$の時間変 化であり、$t=0$における平均流エネルギー $\bar{E}^O_c(0)$で規格化してある。 $t/T=0$に一様等方に与えた撹乱は、その後の成長に異方性が見られ、 $t/T\simeq 6$では初期の2倍から6倍の差が現れる。 最も顕著な増幅を示すのが$r$方向の撹乱であり、同様の振舞いが$\theta$方向に も見られる。これらに比べて$z$方向の撹乱振幅の増幅は目立たない。 これは $\left\langle{\omega_z}\right\rangle $の存在が軸方向運動を抑えるためである。 この様な振舞いは秩序渦内で撹乱の増幅が 半径方向に顕著なことを示す。この領域での可視化結果によると、表面に発生した 屈曲波がこの増幅に対応する。この振舞いは秩序渦と乱流との相互作用によって渦 表面上に発生した渦波によるものと考えられる。

図 12: 渦核内部での平均流と撹乱の単位体積当りのエネルギーの変化。$t=0$の平均流エネルギーで規格化。$\alpha =40$
\includegraphics [width=0.45\textwidth]{EcoreMay1402c.eps}

図 13: 渦核内の撹乱の成分毎の時間変化($\alpha =40$)。
\includegraphics [width=0.45\textwidth]{EcoreMay1202b.eps}

渦核外部の平均流エネルギー$E^O_e(t)$は、図14の様に時間と共に減少し、$t/T=6$で当初の約20%が散逸され、同時に 撹乱エネルギー$E^T_e$が増加する。これはワームの活性化(伸張)に平均流のエネ ルギーが用いられたことを表わしている。

図 14: 渦核外部での単位体積当りのエネルギーの変化。 実線:平均流のエネルギー、点線:撹乱エネルギー。$t=0$の平均流エネルギーで規格化。$\alpha =40$
\includegraphics [width=0.45\textwidth]{EextMay1402d.eps}

渦核外領域の撹乱エネルギー $\bar{E}_{\mathrm e}(t)$も時間と共に増加し、$t/T\simeq 6$では初期状態 の4倍から10倍まで増えている。顕著な振舞いは$r$方向に見られ、$z$方向にも 同様の傾向が見られる。これは秩序渦から周辺乱流場へとエネルギーが注入されて フィラメントが活性化され、その結果$r$及び$z$方向の速度変動が強められる。 またRDTでは $\bar{E}^{\theta}$の増幅は見られないが、 巻き付いた微細渦間の非線形相互作用によって $\bar{E}^{\theta}$も増加している と考えられる。

図 15: 渦核外での撹乱の成分毎の時間変化。
\includegraphics [width=0.45\textwidth]{Eseinbunb39May1202aplus.eps}


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Naoya Takahashi 平成14年9月17日