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: 5.3 エネルギー変化について : 5. 統計量による解析 : 5.1 渦度分布の時間発展について

5.2 秩序渦半径と循環について

秩序渦構造にも変化が生じる。最も顕著なのは渦核の太 さである。図9は3種類の異なる$\Gamma_0$を用いて投入したとき の、初期状態に対する渦の太さを時間について示したものである。 Lamb-Oseen渦の時間変化に比べて半径が太くなっていることがわかる。 また$\alpha $が40と24においては、初期($t\le 1$)の振舞いが一致している。これ は乱流場に対して十分に強い循環( $\alpha=40, 24)$が与えられたため、 RDTで予言されるような線形過程が起っているものと考えら れる。 このとき可視化では秩序渦から乱流場へエネルギーが流出し、フィ ラメントを形成し始めている時間に対応する。 その後初期循環の小さい秩序渦である$\alpha=24$での半径の増加 が卓越しはじめる。こちらの方が秩序渦の持つエネルギーが小さいので、 乱流場との相互作用の影響を受けやすいためと考えられる。

図 9: $\alpha $での渦半径の時間変化( $\alpha =14,24,40$)
\includegraphics [width=0.45\textwidth]{compare.eps}

初期循環の弱い$\alpha =13$では、フィッティ ングは意味をなさなくなる。 これは $\alpha>24$において見られた線形過程( $\omega_{\theta}$の成長)を経ず、 秩序渦が乱流場からの作用を計算直後から受け るためである。その結果 $\left\langle{\omega_z}\right\rangle (r)$は図8にある 様なガウス型の分布を取ることができず、秩序渦の大規模構造も崩壊してしまい、 フィラメントと分けることが難しくなり、半径の見積りができなくなる。

10は、式(6)でのフィッティングで得た循環 $\Gamma(t)$の時間変化であり、 初期値$\Gamma_0$で規格化してある。 循環$\alpha=24,40$において$t/T \simeq 2$までは 保存しているが、それ以降$\Gamma(t)$は減少をはじめ、$t/T\simeq 6$では全 体の10%程度減っている。

図 10: 循環の時間変化( $\alpha =14,24,40$)
\includegraphics [width=0.45\textwidth]{compareGamma.eps}

この減少は第3節で確認したように秩序渦同士の影響から来るもので はなく、微細渦構造が図1の秩序渦配置によって影響を受け たものと考えられる。秩序渦に挟まれた計算領域$[\pi,3\pi]^3$ における渦構造の様子を見たものを図11に示す。

図 11: 境界での渦構造の様子(エンストロフィーの等値面,$4\omega _{rms}$)。$\alpha =40$, $t/T=6.3$。(a)上から見た場合、図の4隅が 秩序渦中心。(b)側面、両端が秩序渦中心軸。
\includegraphics [width=0.45\textwidth]{btop300.eps} \includegraphics [width=0.45\textwidth]{bside300.eps}

11(a)では中心部に微細渦構造が一文字になって引っぱられ ている様子がとらえられている。この様な渦が鉛直方向に散見されることが図 11(b)よりわかる。 これは秩序渦の微細渦活性化が計算の境界にまで及んで 構造変化を引き起こし、秩序渦への意図しない影響を与えたため、循環 $\Gamma(t)$が減少したものと思われる。一方$\alpha =13$での変化が急激なのは、 秩序渦の崩壊が急激に起こったためと考えられる。



Naoya Takahashi 平成14年9月17日