3.1 撹乱源から離れた領域での分布
これまでの研究から明らかになっている問題点を,今回得られた実験結果を用いて示す. まず,計測例として,RQ= 0.31×106(R(θ=0°)= 214 ),θ= 39 °において計測された,f=870Hz(||=0.09)の撹乱の挙動を示す.局所レイノルズ数が臨界値よりも高く,撹乱源からも離れた計測位置では,Y≒0.24を境に,反対方向に伝播する波長の異なる波動が観測された(図5a).2種類の撹乱が存在することは振幅および位相分布からも明らかである.無次元化された振幅A/Qeの分布では,Y≒0.22と0.28で最大振幅をとる2つのピークが観測された(図5b).一方,位相φの分布は,それぞれの撹乱が相反する方向に一定の位相速度で伝播していることを示している.また伝播の方向が反転する位置Y≒0.24は,振幅が最小となる位置とよく一致した.つまり,2種類の不安定撹乱は,予測通り,明確に分離している.それぞれの撹乱の不安定化機構は,スパン方向の波数から同定できる.図5bからYが小さい領域に分散している撹乱の波数=0.62は他方(=0.32)に比べ小さいことがわかる.また,この領域では撹乱の伝播方向はYが減少する方向で,正の波数ベクトルとは逆向きである.すなわち無次元周波数が負であると推測される.これらの結果を撹乱伝播理論4)と比較すると,Yの増加する方向に伝播する撹乱はC-F不安定によって,またYの減少する方向に伝播する撹乱はS-C不安定によって増幅していることがわかる.
(a) (b) 図5: 撹乱源から離れた領域での速度変動波形(a) [動画]と振幅および位相分布(b).
Λ=50゜,RQ= 0.31×106,θ= 39 °,Z=1.3, f=870Hz.