3.1 実験結果 初期値問題 Δ=0.05

初期に h に擾乱を与え、 Δ=0.05 としたときの h の時間変化を図4に示す(それぞれの図をクリックすることで、時間変化が動画として再生される)。 この実験は、現実の太平洋や大西洋よりΔが極端に小さいが、Rossby波の位相速度がKelvin波に対して非常に遅いため、Rossby波とKelvin波の変換過程がはっきりわかる。

実験1: 初期に与えた擾乱は、Rossby波として西に伝播し、西岸に当たると、西岸からKelvin波が境界沿いに伝播して、その後に定常的な地衡流を形成する。このケースではΔが小さく、Rossby波の位相速度に比べて、Kelvin波の速度が桁違いに速いので、Rossby波の先端が境界に達すると直ちに境界に沿った地衡流が形成され、徐々に流れが強くなっていく。この流れの東側の部分は、β効果により再度Rossby波として西に伝播し、これが何度も繰り返される。

実験2: 初期に与えた北端の擾乱は、Kelvin波として境界沿いに何度も伝播し、最終的に定常的な地衡流となる。その後、実験1 の場合と同じように、東岸からRossby波が伝播して、Kelvin波とRossby波の振動が何度か繰り返される。

実験3: 初期擾乱がRossby波として西に伝播して境界(島)に達するまでは(1)と同様である。しかし、その後できるKelvin波は、島の南北に水路があって南北の境界に到達できないので、島をまわりこんで定常流を形成する。その定常流が再度Rossby波として西に伝播し始めるため、あたかもRossby波が島をすり抜けたような結果となる。

実験4: このケースも最初は 実験1 と同様であるが、Rossby波が境界に到達した後、Kelvin波に沿って定常流をつくり、その流れが2箇所でRossby波として伝播し始める。この時、Kelvin波の位相速度がRossby波に対して速いので、定常流の強さはどこもほぼ同じで、そこから出る2つのRossby波もほぼ同じ強さとなる。

実験5: Kelvin波が南側の境界を伝播して定常流を作る以外は、実験4 とほぼ同様である。

 
実験1
実験2
実験3
実験4
実験5

図4:初期値題 Δ=0.05の結果。

それぞれの画像をクリックすると動画が再生される。