e. 湿潤対流調節スキーム
通常の大気の GCM において湿潤対流を扱う際, 水蒸気量が少ないという近似を 用いている. しかし, 太陽定数が増大した場合大気中の水蒸気量は大きく増大するので この近似を用いるのは適切でない. 本研究では, 水蒸気が少ないという近似を用いない対流調節スキームを使用した. 以下ではその詳細について述べる.
断熱の式
水蒸気と乾燥空気からなる空気塊における断熱の条件は,
となる. 本論で考えているように cpn=cpvの場合について差分化すると, 断熱の式の差分形:
が得られる. ただし
ここで,
この断熱の式を用いて 1 次元問題における温度構造の決定・ 湿潤対流調節のパラメタリゼーションを行なう.
1 次元問題における断熱線の引き方
1 次元問題で下から断熱線を引く場合には, 断熱の式を満たすように, Tg, q*(Tg) から出発して最 上層まで下から順に Tk, qk = q*(Tk) を決めていく. 実際には, Tk-1, q*k-1 が与えられた条件の下で, Tk に適当 な初期推定値を与えて, そこからのずれを
によって計算し, Tk を決定していく. 更に q*k は飽和蒸気圧曲線から決定する.湿潤対流調節スキーム
3 次元計算において, 以下の条件が満たされた点においては 温度分布, 水蒸気分布を湿潤断熱で決まる構造に調節する.
- 成層不安定である.
- 飽和または過飽和である.
調節を行なうために断熱の他に, 調節の前後における湿潤静的 エネルギー保存の条件
を用いる. この式を差分化すると湿潤静的エネルギーの保存式の差分形:
が得られる. ただし
ここで,
断熱の式の差分形に湿潤静的エネルギーの保存式の差分形を代入すると, 次のようになる.
この式と湿潤静的エネルギーの保存式の差分形から , を求め, 比湿を
と決める.以上の調節を下層から順番に行ない最高 10 回繰り返す.