h. 暴走限界はどうのように決まるのか?
(鉛直構造の検討)対流圏フラックス放出条件について考えるので, 暴走しないぎりぎりの状態である 実験 S1570 の場合の熱帯域の鉛直構造を詳しく見ていくことにする. 図 1 は温度, 相対湿度, OLR に対する各レベルからの寄与, 光学的深さの鉛直分布である. これらの図から以下の情報が得られる.
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図
1: 実験 S1570 の場合の緯度 2.77 における相対湿度, OLR
に対する 各レベルの寄与(W/m2), 光学的厚さの鉛直分布.
いずれも950 日から 1000 日の平均値. OLR に対する寄与とは,
各層から大気の上端まで到達する上向き放射
フラックスの大きさの分布を示したものである.
この値が最も大きいレベルが OLR を決定する上で重要な役割を
果たしていると考えられる. |
実験 S1570 における圏界面レベルは, 凝結加熱分布から判断するに σ=0.1 〜 0.2 である. 上の結果とあわせて考えれば, OLR の値は 対流圏の温度構造によって規定されているということがわかる. つまり, OLR の漸近値 400 W/m2 は 1 次元放射対流平衡解 における対流圏フラックス放出条件によって記述される可能性が ある. 次では, 1 次元放射対流平衡解の上限値と 3 次元計算で得られた OLR の漸近値との対応について考えることにする.