4. まとめ

3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 4.a. 結論 4.c. 今後の課題・問題点

b. 本研究より得られる示唆

以上の結論は, 暴走温室状態の発生に関しては 1 次元放射対流平衡モデ ルによる記述が非常に有効であることを示唆している. したがって, Nakajima et al.(1992) で議論された, 乾燥空気の量を変 えた場合や吸収係 数を変えた場合などに得られた結果はそのまま 3 次元系に拡張できるも のと思われる. また原始大気の進化を論じた Kasting (1988) や Abe and Matsui (1988) の結論も, 3 次元的な考察を行った場合でもおおむね正しいに 違いない. ただし, 彼らも議論しているように, 相対湿度を考慮すれば 大気上端における外向き赤外放射の上限値は彼らが得た値よりも大きく なるはずである. したがって, Abe and Matsui (1988) の計算結果から得られる, 原始海 洋が形成されるときの集積エネルギーフラックスの値は少しばかり大き くなるはずである.

Nakajima et al.(1992) では異なる表面温度でも同一の放射量を 射出する解が得られていた. これは, 入射放射量の値によっては平衡解が複数あることを示唆している. これらの平衡解の安定性については正しく調べられてはこなかった. 本研究の結果は, Nakajima at al.(1992) が得た表面温度が低い 方の平衡解は安定であることを示唆している. しかし, 表面温度が高い方の解の安定性はまだわからない. この解は不安定であると予想されるが, 時間発展問題を解いてみな ければ答えは得られない. 放射の緩和時間, 水蒸気分布が変化するタイムスケールなど 諸々のタイムスケールがわからないといけないからである. この問題を考察する 1 つの方法としては, 実験 S1600 の結果を初期値として入射放射を下げてどのような平衡状態 に達するのかを調べる, ということが考えられる. 今後の課題である.


4.b. 本研究より得られる示唆 3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 4.a. 結論 4.c. 今後の課題・問題点