先に整理した相変化の効果(潜熱・分子量効果・重力分離・条件つき不安定) のために、 「雲対流」の時空間構造を解析的な予言は困難になる。そこで パラメタを制御した数値モデル実験で理解を試みる。
基本は地球用の二次元積雲モデル (基礎方程式系は付録を参照)である。
概略としては、
- ブジネスク系(鉛直密度構造は考慮)の運動方程式・連続の式
- 三つのカテゴリに分けた水、すなわち
- 気相(水蒸気)
- 雲水(空気に流される液相の水。その凝結蒸発は瞬間的に起こる。)
- 雨水(空気に対して相対的に落下する液相の水。蒸発には有限時間を要する。)
の保存の式
- パラメタ化された雲物理(水蒸気・雲・雨の相互のやりとり。概要は右図。)
を時間発展問題として解くものである。
はじめに述べたように、本研究の方針は:
出来るだけ単純な熱対流に近い共通した設定で 相変化の仕方だけを変えて、対流の様相を比較すること
である。このうち、共通の設定としては:
- 流体内部を一様に冷却
- 上下境界は断熱(または温度・湿度固定)
をおく。
また、相変化の仕方に関しては:幸いにして、多少とも現実的な地球流体的事象の中に、
相変化対流の特色の典型例があると目されるという事情があるので、地球の雲対流・木星の雲対流・地球中心核の対流を模した設定をする。
それぞれの特徴は:
- 地球の雲対流では、凝結は上昇で生じる。分子量効果効かない。
- 木星の雲対流では、凝結は上昇で生じる。分子量効果が重要である。
- 地球中心核の対流では、凝結は下降で生じる。また組成対流的である。
である。
数値実験は、ほぼ一様な初期条件から長時間積分を行い、 統計的準定常状態を吟味する。