相変化を含む対流の振舞は、後に見るように複雑である。 そこで数値計算に進む前に、準備として対流における相変化 効果の見所を簡単に整理しておく。
以下、
相変化を含む対流の総称として「雲対流」、
相変化の総称として「凝結・蒸発」を用いる。
地球大気の雲対流では凝結は上昇運動に伴って生じているが、 これは実は自明なことではなく、 凝結成分の潜熱と主成分の比熱のかねあいで決まり、 (説明はこちら)
比熱小(or 潜熱大)のとき上昇流で凝結(ex. 地球・木星の雲対流)
比熱大(or 潜熱小)のとき下降流で凝結(ex. 地球中心核の鉄対流)となる。
地球の雲対流において、水蒸気の凝結は 潜熱の放出によってパーセルの温度が上がり、浮力は増加する。 しかし凝結が必ず浮力を生成するかというと、これまた 自明ではなく、 凝結成分の分子量の主成分の分子量に対する比と凝結成分の混合比の かねあいで決まり、(説明はこちら)
分子量比 < 1 or 混合比小のとき浮力増加( ex. 地球の雲)
分子量比 > 1 and 混合比大のとき浮力減少( ex. 海王星のメタン雲?)
となる。
地球の雲対流では、水蒸気が凝結して雲になったあと、 ミリメートルのオーダーの直径に成長する結果、重力分離 して雨や雪として地上に降ってくる。
この結果として(説明はこちら):
- パーセルの熱力学が非可逆となる。
- 凝結物の移動により離れたパーセルが communicate する。
という結果が生じる。
さらには、上の非可逆性のために:
- 「条件付き不安定」(鉛直流の向きが上か下かによって、局所的な安定度が異なる状況)
- 「潜在不安定」(擾乱の振幅によって、安定度が異なる状況)
という非線形性が生じる。(説明はこちら)