座談会「流体力学の基礎教育」

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〔大林〕:僕自身は流体そのものの授業は現在受け持ってませんで, 航空学科ですので, 飛行力学というのを学部では受け持っています. それとは別に流体関連に, どういう授業があるかというのを簡単に紹介しますと, 2 年生の後期で流体力学 A というのがあります. これは実は B, C と続くんですが, 航空学科の学生には B, C は必修にはなっていません. 航空学科の学生は 2 年の後期で流体力学 A があって, 3 年の後期で今度は空気力学ということで圧縮性流体にいきなり飛びます. 4 年生で空気力学 B というのがあって, これは主に高温気体を取り扱っております.
 学部はそのようになっておりまして, 大学院のほうで流体関係の講義も幾つかあるんですが, 僕は中橋先生と半分ずつ, 数値流体力学を担当しております. その印象から言いますと, 流体力学Aを終わって, その後, 空気力学に来た. 空気力学関連は確かに勉強してきたんだと思うんですけれども, 流体そのものに関する知識が弱いなと感じます. 結局, 2 年の後期の流体ですから, 非常にベーシックなことしかやってなくて, 境界層理論とか, 乱流とか, 一歩踏み出そうとすると, 途端に, それは何でしょうという顔をするので, 困ったものだなというのが……. この 「流体力学 A」 は, 粘性や圧縮性, 衝撃波の名前が出ては来るのですが…….
 あと, 数値流体力学なので, 当然, 数値計算の素養も必要とされるんですが, ここにも非常に物足りないものがあります. 数値計算というのは線型代数が基本的に必要だと思うんですけれども, 教養部廃止のあおりをくらって, 線型代数が実は学部で 1 コマしか教えてないんですね. それがいきなり n 次元の行列を解きなさいとか何とかいう話になったときにあまりついてこれない. その辺, 先ほどもお話に出ていますけれども, 教養部廃止というのは何だったのかなと思います.
 もうひとつ, 木村先生がおっしゃったように, 航空の学生以外も大学院の数値流体に来るんですね. そうすると, 実は, 航空は学部で数値流体力学を教えているんですけれども, それがリセットされてしまう. ついてこれない学生がいるので, 戻って教えなきゃいけない. その辺もやっぱり問題かなと思います.
 逆に, 数値流体力学は, 学部の教育をやめちゃってもいいんじゃないか, もっと流体力学の基礎をしっかり教えてもらって, 数値流体は大学院でやるというのでもいいんじゃないかと思ったりもします.
 それに最近は, 数値流体力学もソフトを買えば何かしら計算できるようになってきましたが, その結果が本当に正しいかどうか判断するのは, 結局ソフトを使っている本人なんですよね. そういう意味で, 現実であれ仮想現実であれ, 現象を流体力学的に解釈する力がこれから最も要求されることだと思います. 数値流体でも, 計算のテクニックだけではなく, そういうことを教えた方がいいのではないかと思ったりもします.


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