座談会「流体力学の基礎教育」

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〔笠木〕:学部教育では, 複数の教官とともに, 流れ学第 1 , 第 2 , 第 3 という講義を担当しております. これらに加えて, 関連講義として, 伝熱学, 環境熱流体工学, 乱流工学, 航空宇宙機械などがあります.
 ところで, 最近学部教育全般に対する東京大学工学部, あるいは機械系の姿勢が, アナリシスよりはシンセシス向きになってきたと思うんです. あるいは, 確立された学問体系をビルデイングブロック方式に積み上げて教えていこうというよりも, ものづくりから入っていこうといいましょうか, 実際の物の部分を先に, あるいは並行して教えていこうという努力に変わってきているんですね.
 一方, 機械系というのは, 従来, 材料力学, 流体力学, 熱力学, 機械力学が基軸でしたが, 最近はさらに幾つかの基軸が加わってきたので, 流体力学を教えるカリキュラムは, 時間的に縮小されています. そういった面からも, 流体力学の体系を忠実にたどりながら教えていくということが難しくなってきました. 共通的に教えるところは流れ学の 1 , 2 ぐらいまでで, その中では, 応力と力の関係やナビエ・ストークス方程式の導出など, 粘性流体に関わることを中心に教えます. 連続体力学として, 固体力学も含めてスタートするわけではありません. 具体的なイメージが持ちやすいということから, 流体は流体, 固体は固体として入ったほうがいいだろう. それから, 流体を教える間に内燃機関といった“もの”の講義が並列でします. もちろん, 設計, あるいは CAD 教育というものも重視されております. 実験はなるべく増やしたいと考えているのですが, これも時間的制約, 他の領域とのバランスが縮小気味であるというのは否定できない事実です.
 もうひとつ先ほどから指摘されている学部教育全体で言うと, 大学院の部局化, 大学設置基準の大綱化, そして実体としての大学の大衆化に伴って, 学部教育では教える時間数も減ると同時に, 教える内容も落としている. 一方で, 我々の大学院では, 教官が一番得意とするアドバンストな講義にぽんと飛ぶわけですが, 学部講義との間にかなりのギャップがあるということは, ご指摘のような状況で, このあたりは, 今後, 重要な問題かと思います.


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