〔谷田〕:それで, 酒井先生と笠木先生のお話と関連があるんですけれど, 酒井先生は, 教養学部が脱落したことによって, 流体力学の基礎知識が欠落してポテンシャルが上げられないということをおっしゃって, 笠木先生は, 例えば数学なんかは教養で教わった数学が実際の我々の工学系の勉強にはあまり役に立たないと.
私は, 東大におりましたときは大学院学生だけを教えていましたから, そういう感じは全然なかったんですけど, 東海大に移りまして感じたのは, それ以前の問題があるということですね. 数学なんかでも, 高校での数学のレベルをどう補講するか, 保持するかというような問題もありますが, 東海大学というところはわりとそういう授業改革, 大学改革に熱心な学校なんですね. それは, 教員側というか, 現場にとっては非常にシビアかつタイトなものになっているので, 必ずしも現場のほうではもろ手を挙げて賛成というわけじゃないんですけれど, 東海大学には, 授業評価, セメスター制等, 新しいものをほかの大学に先んじてやるというような積極性があるんですね.
それで, 今度セメスター制になりますものですから, 大学授業改革セミナーが連続して行われたんです. きょう, 会合が開かれるというので, 今まで行われたセミナーのパンフレットを広げて勉強してきたんですけれど, その中で, 早稲田大学理工学部材料工学科の大坂敏明先生のお話が印象的でしたのでご紹介します. この材料工学科で, 大学院学生が大分前 ── 十数年前ぐらいですかね, 率先して授業評価というようなことをやったらしいんですよ.
そのときに, 学生から非常に貴重な意見が出てきまして, そのひとつに, 数学が材料工学科でどう役に立てられているかということを学ぶ機会が余りにも少ないという注文が出てきたらしいんです. それで, 普通の数学の先生が数学を教えるのじゃだめなんですね. いろいろサーベイしたところが, 金属材料工学科出身の数学者がいたらしいんですね. そこで, その数学の先生を招いて, 数学の講義をやってもらったわけです. そうしますと, 材料工学をきちっと考えた上での数学を学生に与えるというようなことで, 非常に効果があったという話をおっしゃっていましたね. それは非常に参考になるということですけれども, 実際, そういう適任の方を見つけてくるのが非常に難しいということはありますね.
先ほど, 酒井先生が, 学生に卒研で実際にテーマを見つけさせて, 自分でやらせるというのをおっしゃっていましたね. それを早稲田大学の材料工学科ではやっているらしいんですね. 「失敗させる実験」 というふうに名前をそのとき言っておられたんですけれども……. ほんとうに学生を放り出しているらしいんですね. 学生が率先してテーマを見つけてきて, 先生方はそばにただ立っていて, 学生が泣きついてきたら, 何かコメントを与えるというようなことをやるらしいんです. それを 3 年生のときにやって, 4 年生で卒研に入っていくと, 非常にポテンシャルが上がった状態ですから, やりやすい. ですけれども, 最初の 「失敗させる実験」 の期間というのは非常に大変だというお話でした. ですから, 授業改革をやるのは, 学生にとっても大変ですけれども, 教える側にとっても非常に大変です.
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