座談会「流体力学の基礎教育」

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〔酒井〕:実験に関して二つポイントがあると思うんです.
 一つは, 流体力学に関する知識を 「いかに効率よく伝えるか」 というところ. 百聞は一見にしかずで, 幾ら式を書いててもわからないところを, 自分の目で見たら何となくわかった気になる. ほんとうはその式まで理解してくれないと困るんだけど, とりあえず, 興味を持たせて理解を助けるという, 知識を教えるための一つのやり方ですね. それに関しては非常に効果が高いと思いますが, 必ずしも学生自身が自分でやる必要はないんですね. 見せてやればいい.
 もう一つは, 実際に自分で考えながらやる実験. さっき 「失敗する実験」 のお話しがありましたけど, これは, テーマは何でもよくて, 失敗してもいいし, うまくいく必要はない. 科学的な論理を自分で組み立てていく実験です. ほんとうに自分の手でやる実験で一番重要なポイントはそこだと思うんですね. 昔, 教養部でやっていた実験が, つまらないと言われていたのは, マニュアルがあって, そのとおりにやると, 答えが出るわけです. ちょっと頭のいい学生は答えがわかっちゃっている. それをあたかもやりましたというようなレポートを白々しく書くわけですね. おもしろくないわけです.
 今, 知識として教えなきゃならないことはどんどん増えている. それをどんどん詰め込むと, 余計おもしろくなる. 整理して分かりやすくすればするほど, 教わる側はおもしろくないんです. 意外性がないし, ドラマもない.
 だから, 一方では, 科学的知識をきれいに体系化して, きれいに教えるということも大切なんですが, 素朴な疑問でいいから, 自分で 「何でや?」 と思って考えて, 自分で体を動かして実験してみる. それで, それなりに自分で結論を出してくるというのは, サイエンスとしての一つの道筋を自分でつくるという訓練においては必須だと思うんです.


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