本研究では, Sakai の導いた回転系の対流の水平スケールの理論式の それぞれの仮定の妥当性を検討する. この目的のために支配方程式の各項の評価が可能な数値計算を行う. Sakai の実験では対流は非定常かつ3次元的であり, 上昇流や下降流において渦を形成しており, 不規則な運動をしている. 本来は, このような実験を再現するためには3次元計算が必要であろう. しかし, Sakai が理論式を導く際に用いた仮定には, セルの幾何学的な形状のほかには3次元性は含まれていない. したがって, 2次元系で数値計算を行なったとしても, 仮定に用いた方程式の各項のバランスが成立するかを検討できるだろう. もちろん, 2次元数値モデルの結果が3次元数値モデルの結果と 定性的に同じとなる保証はない. より正確な判断を下すためには, 3次元数値モデルによる計算が必要である. しかし, それにも関わらず, 2次元数値モデルの結果は より複雑なモデルを解析する上での指針を与えてくれるであろう. 本研究では, Sakai の導いた理論式を数値計算の上で検討することを目的とし, Sakai の水を用いた室内実験を再現することは目的としない.
計算結果では特に回転数(テイラー数)に対する水平スケールの依存性に着目する. Sakai の予想したように回転とともに極大が生じるのか, その極大は仮定したバランスが成り立っているのかを調べる. また, 特に回転が小さい場合から実験をはじめて, 慣性レジームから地衡風レジームの遷移がどのような場合に生じるのか についても着目する. この論文では, はじめに Sakai の理論式の復習をし, 式の上でなぜ対流の水平スケールが極大になるのかを理解する. 次にこの研究で用いた数値モデルの概略を述べ, 実験条件と結果を示す. 次に, 実験におけるバランスを解析し, Sakai の式との比較検討を行う. 最後に境界条件の差異について議論する.