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回転系における
対流のレジームの遷移と水平スケール:
2次元数値計算佐藤 正樹 (埼玉工業大学機械工学科)
回転系における対流の水平スケールについて, 2次元数値モデルを用いて調べた. 数値計算の結果をもとに, Sakai が導いたスケーリング則について検討した. 上下とも粘着条件を課した場合について レイリー数(Ra), テイラー数(Ta)の依存性を調べたところ, 一般にレイリー数が大きいほど水平スケールは大きくなるが, テイラー数に対する依存性は単調ではなく, テイラー数の変化にともなって水平スケールの極大が存在する. このようなテイラー数に対する依存性は Sakai の理論とみかけ上あっている. しかし, テイラー数の変化によって, 水平方向の運動方程式で粘性項あるいは非線形項が重要な 「粘性・慣性レジーム」から コリオリ項が重要な「地衡風レジーム」への遷移が生じ, 水平スケールの減少は粘性・慣性レジームから地衡風レジームへの遷移に対応している. 特に, 中立状態よりも十分に大きなレイリー数の領域 (Ra = 105, 106) では粘性・慣性レジームから地衡風レジームへの遷移は, 線型論で予想されるテイラー数よりもかなり大きな値の時に生じ, 乱流的なふるまいを経てから急激に水平スケールが減少するという 興味深い特徴がみられた. Sakai は地衡風バランスをスケーリングに仮定しているので, 本研究で得られた水平スケールの極大は Sakai の理論に対応するものではない. しかし, 地衡風レジームの結果に限っていえば, Sakai の理論により水平スケールが比較的よく説明できる.
また, 上下の運動量境界条件を変えた場合の実験を行なったところ, スリップ条件の場合, 水平スケールは広がる傾向にある. この場合, 時間とともに水平スケールは増大し, セルが合体するときにヌッセルト数が減少することが見い出された.
1998年1月13日受領、1998年4月14日受理 |