この節では Sakai が導いた対流の水平スケールの理論式について復習し, その性質を式の上で検討することにする. 対象とする系は水平に一様な平板内に囲まれた流体層であり, 回転角速度Ω , 上下の温度差 ΔT が与えられている. 系を支配するパラメータは レイリー数 Ra, テイラー数 Ta, プラントル数 Pr であり, これらは次のように定義される:
α は熱膨張率, g は重力加速度, H は流体層の厚さ, ν は粘性係数, κは熱拡散係数である.
Sakai は以下のような仮定を用いて水平スケールを導いた. 上昇流域あるいは下降流域の周りには地衡風的な流れが生じるとする. 対流の上昇流と下降流の間の水平スケールを L とし, 地衡風の典型的な速度を V0 とする. 対流層の上下の温度差は ΔT であるが, 上昇流内部の温度と下降流の内部の温度の差は一般に ΔT よりも小さい. これを ΔTc とすると, 地衡風平衡により,
上下の境界付近にはエクマン層が生じ, このエクマン層中の流れが 対流に伴う上下運動を行う. エクマン層の厚さを δe とすると, 対流に伴う流量は,
上昇流と下降流の内部領域の温度差 ΔTc は, 熱境界層(厚さを δt とする), エクマン層に指数型の分布を仮定して次のように与えられる.
エクマン層の厚さ, 熱境界層の厚さは次のように与えられる.
ここで, 熱境界層の厚さは, 非線形的な経験則, すなわちヌッセルト数のレイリー数に対する3分の1乗則を用いている. またヌッセルト数は熱境界層中の熱フラックスによって計算されるので,
の関係が成り立つ. ここで係数は経験的に c = 0.13 と与えられる. 最後に, 対流に伴う熱フラックスは, 熱境界層内の熱伝導フラックスに等しいから,
(8), (9), (10), (11), (12) を (14) に代入すると, 対流の水平スケールが Ra, Ta の関数として表される: