図15 は (28) 式から得られる 実験値と理論値を比べたものである. 各色の系列で左下ほど Ta が大きい場合に対応する. Ta が大きくなるにつれて地衡風バランスが成り立つようになり, 理論値による予想と近い結果が得られることがわかる. また, 臨界曲線と極大曲線で囲まれる領域(している点)から 大きく外れた点はこの領域以外の点が多いことがわかる. これらの点は, 地衡風レジームにないので, 実験と理論との一致は見られない. 以上をまとめると, ここで行った実験では, Ra = 104, 105 のとき Ta = 104 まで, Ra = 106, 107 のとき Ta = 106 までは粘性・慣性レジームにあり, それらを越える範囲でのみ地衡風バランスの関係が満たされている. Ta の変化に伴って水平スケールに極大が存在するが, この極大は粘性・慣性レジームで生じており, Sakai の理論で予想されたものとは異なる原因に基づくものである. この理由は現段階ではわからないが, 依存性はごくわずかであり, さらに実験を行なって必然性を確かめる必要がある. 一方, 地衡風レジームではセル数の減少がみられる. V0* が Ta とともに減少するので, エクマン流が小さくなり, セル数を多くなることによって必要な熱フラックスが運ばれるという Sakai の理論を裏付けているように見える. 内部温度差は理論と異なる依存性を持つ結果を得たが, セル数が多くなるにつれて数値拡散の影響されてくることを否定できない. いずれにせよ, Ta が大きくなると内部温度差の変化幅は小さくなるので, 水平スケールが小さくなるという結果は変わらない.
図15. 対流の水平スケールの比較. 横軸は (28) 式の右辺で理論値, 縦軸は (28) 式の左辺で実験値. 赤は Ra = 104, 緑は Ra = 105, 青は Ra = 106, 黄色は Ra = 107. 臨界曲線と極大曲線で囲まれる領域に対応する点を させた.