3. 結果 |
3.1 渦度場および帯状流の時間発展の概観
3.2 極東風渦の生成について
3.3 帯状構造の出現条件について
3.1 渦度場および帯状流の時間発展の概観
実空間での流れ場の時間発展を渦度場と帯状流の変化をとおして概観する. ランダムに与えた初期値(の一例)を渦度ωの場として表示すると右図のようになる.
初期値パラメターは, n0=50, γ=1000, で, 切断波数 T341 である.
ここで, 赤色が正の渦度, 青色が負の渦度である.
また, 渦度場の右側には帯状平均した帯状角運動量(u cosφ)の分布を示す.
渦度場の表示は, 赤道上空からの正射図法で, 経線・緯線は30度毎に描いている.
3種類のΩ(=0, 50, 400)について, この同一の初期値から出発した時間発展 を以下に示す. 下図は, それぞれ各Ωに対する最終状態を描いているが, マウスでクリックすると, 初期値からのアニメーション表示が見られるように なっている.
なお, Ω≠0の場合については, 近似的トレーサーである絶対渦度 q = ω + 2Ωμ の場を表示しているため, 南北で惑星渦度(2Ωμ)分の ゲタが含まれていることに注意が必要である.
Ω=0 の場合 |
Ω=50 の場合 |
Ω=400 の場合 |
- Ω=0 の場合には, 平面領域での数値実験結果 (McWilliams, 1984)と同様に, やがて秩序渦が形成されて, 渦の融合や相互作用がみられるようになる.
- Ω=50, 400 の場合には, Ω=0 の場合と同様の渦の融合過程も 見られるが, 惑星渦度(2Ωμ)の勾配により, 中・低緯度では qの等値線の 波打ち, すなわちロスビー波が卓越することが分かる.
- Ω=400 の場合には, 中・低緯度に帯状流の縞状構造が見られ, 高緯度 域には東風が卓越しているのが分かる(この例の場合は特に南極付近で顕著 である).
上図では, 絶対渦度 q の場を描いているため, Ω=400の場合については 惑星渦度のゲタで渦度場の微細構造が見にくい. そこで相対渦度 ω のみの場の時間発展を下に示す.さらに, 東風渦が顕著に見られた南極を中心にして作図したものも示す.
Ω=400 の場合(渦度場)
Ω=400 の場合(渦度場: 南極から)
- 中・低緯度に帯状流の縞状構造に対応して, 渦度場も東西に引き伸ば された構造が出現し, 正・負の渦度の帯が南北に並ぶようになる.
- 南極から見ると, 極東風渦の出現に対応して, 南極付近に正の相対渦度が 集中してくることが分かる. すなわち, 絶対渦度で考えると, 絶対渦度の 緯度勾配が南極付近で小さくなっていることになる.
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