ロスビー波による解釈 -(1) 分散関係による説明 目次 ロスビー波による解釈 ロスビー波による解釈 -(2) 粘性の効果

η が一定の場合のロスビー波の分散関係は

\begin{displaymath}
\omega = \frac{P\eta k}{k^2 + m^2},
\end{displaymath} (6)

である(Pedlosky, 1987). ここで ω は振動数, k,mx, z 方向の波数である.

この問題では ηz 方向に変化するので, 上記の分散関係を局所的に満たすよう z 方向の波数m を変化させつつ波が伝播すると考えよう. その際 k, ω は一定に保たれるとする (付録: ロスビー波詳細).

いま波が z=0 から波数 k,m0 を持つ波が励起されたとすると, 分散関係を鉛直波数 m について解くことにより
\begin{displaymath}
m(z) = -\sqrt{\frac{\eta(z)}{\eta(0)}(k^2 + m_0^2) -k^2}
\end{displaymath} (7)

となる. ここで m の符号は鉛直群速度 Cgz=∂ω/∂mz 正方向になるように定めた(k>0 としている).

この局所的な鉛直波数を用いるとロスビー波の流線のパターンを

\begin{displaymath}
\psi = \psi_0 e^{ikx+i\int_0^z m(z)dz},
\end{displaymath} (8)

と計算することができる. 右上図はこのようにして求めたロスビー波の流線のパターンらせん状対流を比較したものである. らせん状のパターンが対流の流線のパターンとよく一致している.

wkb.gif (37054 バイト) e4p01psi.gif (27264 バイト)

図: ロスビー波の分散関係を用いて求めた流線のパターン. E=10-4 の場合. k=10.2, m0=0 として計算した. 下図は線形計算により求められた P=0.1,E=10-4 での対流パターン.

下側境界から上向きに射出された波は境界面の傾きが急になりηが大きくなる領域へと伝播していく. その際振動数ωと水平波数 k を一定に保ったまま分散関係 (6) を満たすには, 鉛直波数 |m| が大きくならねばならない. このため外側ほど波面が傾いていき, らせん状のパターンになることがわかる (右下図).

らせんの向きはロスビー波の伝わる向きに関係していることに注意されたい. m の符号が負であることは鉛直群速度が z 正方向であることから定まった. したがって, 上側に伸びるにつれて x の正方向にたなびく流線のパターンは ロスビー波が下から上へ伝播していることに対応している.

rwup_s.gif (67074 バイト) rwdn_s.gif (65118 バイト)

図: ロスビー波の伝播と波面の傾きの模式図. 伝わる向き(群速度の符号)によって波面の傾き方が逆になる. 上向きに進む場合が対流のらせん構造の傾きを正しく表現できる.


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