3. 塩水サーマル
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図−5 サーマルの流下速度の流下方向変化 |
図−5はRun 1(初期塩分濃度c0 = 1%),Run 2(c0 = 3%),Run 3(c0 = 5%)のサーマルの流下速度の流下方向変化のグラフである.記号で示したものが実験値,折れ線で示したものが数値計算の結果から求めた値である.この場合では傾斜角が30°と比較的急勾配であるため,乱流強度が大きい.その結果,流下速度の測定値にはかなりのばらつきが生じた.ここに示したデータは5回の測定値を平均したものである.したがって,実験データの精度は計算との詳細な比較に耐えるほどの精度がないことに注意されたい.図−5より初期塩分濃度が大きいほど流下速度が大きいことがわかる.実験結果が流下直後の変動を除いて流下速度がほぼ一定であるのに対し,計算結果は流下距離が大きくなるに従って流下速度が次第に減少してゆく.これはゲート開放後の両者の流動に違いがあること,計算において,周囲水との希釈・混合が大きめに計算された可能性がある.
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図−6 サーマルの最大厚さの流下方向変化 |
図−6は,Run 1(初期塩分濃度c0 = 1%),Run 2(c0 = 3%),Run 3(c0 = 5%)のサーマルの最大厚さの流下距離に対する変化のグラフである.流下距離が小さい範囲では,塩水が静止状態から流動状態への遷移過程にあるが,実験の場合には塩水はボックスに取り付けられたゲートの下部から流出を開始しており,計算で仮定した初期状態とは若干異なっている.流下距離20cmまでの両者の違いはこれらの理由による.この範囲を除けば,最大厚さの変化は,各実験条件とも実験結果と計算結果とでよく一致している.すなわち,初期塩分濃度の違いによる差はほとんど見られず,最大厚さは流下距離の増加に対して直線的に増加するが,これも実験結果と計算結果の両者の共通した傾向のようである.
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図−7 サーマルの最大濃度の流下方向変化 |
図−7は,Run 1(初期塩分濃度c0 = 1%),Run 2(c0 = 3%),Run 3(c0 = 5%)のサーマルの最大濃度を初期濃度で基準化した値を,流下距離x を初期面積の平方根√A0 で無次元化した距離に対して示したものである.基準化した最大濃度の無次元流下距離に対する変化特性は,初期塩水濃度の値によらずほぼ同じような変化曲線となることがわかる.このことは,今回の初期濃度の範囲では,塩水の混合機構は極めて似ており,無次元流下距離に対する相対的な濃度の変化がほぼ同じであることを意味する.これらの結果は,斜面の傾斜角が同じであれば連行係数の大きさは初期塩分濃度によらずほぼ一定であるという実験結果と一致する.