3.実験結果及び考察
 
3.5 乱流塊と不安定波の関係
 

速度変動の等値線分布を乱流域の輪郭(<v ’>=0.02)と比較すると、乱流域よりもずいぶん外側にまで不安定波が分布していることがわかる。

動画3でも示したように、乱流塊の周りには少なくとも2種類の不安定波が観察できる。360≦R ≦440の乱流域外縁側に位置する不安定波(青矢印で示す)は半径方向波長が長く、波面は周方向にほぼ平行であるが下流側ほど半径方向内側に向かうような傾きを有する。

一方、330≦R ≦360の乱流域後縁部に位置する不安定波(赤矢印で示す)は半径方向波長が短く、波面は下流側ほど半径方向外側に向かうような傾きを有する。また、その波面の特徴はR ≧450に位置する定在渦のものと非常に良く似ている。

これらの不安定波の波面はTakagi et.al.(2000)が示した回転円盤流中の不安定波(付録2)、すなわちS-C不安定による進行波とC-F不安定による進行波にそれぞれ良く似ている。

これらの不安定波が乱流塊後縁よりも上流側において広く分布する様子は乱流斑点の翼端部上流に付随する斜行T-S波(Wygnanski et al. 1979)を連想させる。ただし、乱流斑点に付随する斜行T-S波は乱流斑点に誘起されたために現れたものであり、斑点の成長を支配するような存在ではなくその役割は消極的である(付録1)。これに対し、円盤流中の局所乱流塊周りの不安定波は、先に不安定波からなる波束が形成され、その中の一部が乱流遷移した結果、乱流域の周りに付随するように見えるだけであり、乱流域の形成に果たす役割は大きいと思われる。
 

 


 


図6 速度変動の集合平均値<v >のR -f 曲座標平面における等値線分布. 図中赤線及び青線で囲われた領域はそれぞれ<v >≧0.005, <v > ≦-0.005となる領域を示す.  黒線は乱れ強さの集合平均値.