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木星大気を念頭においた雲対流モデルの開発

杉山 耕一朗 (国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト*1),
小高 正嗣 (北海道大学 大学院理学研究院/理学院 宇宙理学専攻),
中島 健介 (九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門),
林 祥介 (神戸大学 大学院理学研究科 地球惑星科学専攻)

(Received 10 July, 2008; in revised form 23 January, 2009)

要旨

木星大気における複数凝結成分の雲の鉛直分布と対流運動の特徴を調べることを目的として, H2O, NH3 の凝結と NH4SH の生成反応を考慮した 2 次元の雲対流モデルの開発を行った. モデルの基礎方程式系は, 準圧縮系方程式系 [1] に木星大気中の 3 種類の凝結成分の保存式を組み合わせたものであり, 雲微物理過程と乱流混合過程は, それぞれ Kessler (1969)[2] と Klemp and Wilhelmson (1978)[1] のパラメタリゼーションを用いて表現する. 開発したモデルを用いた 1 つの計算例として, 対流圏界面付近に現実の木星とは異なる強い放射冷却を与えた雲対流の長時間数値計算を実行した. 3 種類の成分を持つ雲の分布を表示するための可視化手法 (RGB 合成を用いた可視化手法) を提案採用すると共に, 統計的平衡状態での 3 種類の成分から成る雲の鉛直構造と対流運動の様相を調べた. 計算結果より, H2O の雲粒と NH4SH 雲粒が NH3 凝結高度を超えて対流圏界面まで移流され, 大気上層では 3 種類の雲粒が混合することが示された. この雲の鉛直分布は, 従来の研究で予想されてきた古典的な 3 層構造の雲 [3],[4] と大きく異なるものであった. 開発した雲対流モデルは <URL: http://www.gfd-dennou.org/library/deepconv/>[5] に公開した.

本文

1. はじめに
2. 開発した雲対流モデルの概要
2.1. 定式化
2.2. 離散化
2.3. 複数成分の雲の可視化
3. 雲対流の長時間数値計算
3.1. 計算設定
3.2. 計算結果 (1): 鉛直運動と大気構造
3.3. 計算結果 (2): 雲と凝結性成分気体の鉛直分布
3.4. 計算結果 (3): 静的安定度
4. まとめ

補遺

A. 力学的枠組み
B. 熱力学的枠組みと雲微物理過程モデル
C. 乱流混合のパラメタリゼーション
D. 人工的な散逸項
E. 凝結性成分気体の初期混合比
F. 熱力学物性値の計算
G. 静的安定度と熱力学変数との関係
H. 謝辞
I. 参考文献
J. 著者・連絡先


*1: 現所属: 北海道大学大学院理学研究院/理学院 宇宙理学専攻


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