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4. 泥水サーマル



4. 2 実験結果と計算結果との比較・検討(θ=10°)
サーマルの流下速度の流下方向変化
図−10 サーマルの流下速度の流下方向変化

非定常な泥水流の数値計算の妥当性の検証のため,泥水サーマルの流下速度,最大厚さ,最大濃度,負の浮力の総量(サーマル内部の硫酸バリウムの総量)の流下方向変化をグラフで表し,実験結果と数値計算結果の比較を行った.

まずはじめに,傾斜角10°の実験である福嶋ら(1999)の実験との比較結果を示す.硫酸バリウム粒子は広い粒径分布を持ち,代表的な粒径を明確に特定できない.このため,粒径を変化させて計算を行い,浮遊粒子総量の流下方向の変化が実験結果と一致するような粒径を求めた.その結果,平均粒径をDs = 0.04mm とすることで浮遊粒子総量の流下距離に対する変化の実験値とほぼ一致させることができた.非保存性の重力流である泥水流と比較するため,保存性の傾斜サーマルとして,同じ総浮力をもつ塩水サーマルの計算も行った.これにより,沈降速度が零となる極限の状況との比較を試み,泥水サーマルの特徴をより明確にできるのではないかと考えた.    

図−10は流下速度の流下方向変化を示したものである.実験結果は実線の計算結果とよく一致している.泥水サーマル,塩水サーマルの両方の流下速度は次第に減少するが,泥水サーマルの方が減少が早い.塩水サーマルの総浮力が一定なの対し,泥水サーマルでは粒子の沈降により総浮力が減少するためである.

サーマルの流下速度の流下方向変化
図−11 サーマルの最大厚さの流下方向変化

図−11は最大厚さの流下方向変化を示したものである.実験及び2種類の数値計算とも最大厚さは流下距離に対して,ほぼ一次関数的に(直線的に)増加しており,両者はほぼ一致しているといえよう.塩水サーマルと泥水サーマルとで顕著な差は見られない.

サーマルの流下速度の流下方向変化
図−12 サーマルの最大濃度の流下方向変化

図−12はサーマル内の最大濃度の流下方向変化を示したものである.横軸,縦軸は図−7と同じにした.実験では濃度は測定されていない.塩水サーマル,泥水サーマルとも濃度は流下とともにかなり早く減少する.しかし,泥水サーマルではルに比べ早く減少している.これはもちろん,粒子の沈降によって,サーマルから逸脱するからである.塩水サーマルの濃度の現象は周囲水との連行・混合によってのみ生じる.

サーマルの流下速度の流下方向変化
図−13 サーマルの浮遊粒子総量の流下方向変化

図−13はサーマルの負の浮力の総量の流下方向変化を示したものである.塩水サーマルでは浮力総量は流下距離に対して変化せず一定である.一方,泥水サーマルでは負の浮力の総量は流入後に次第に減少してゆく.また粒径を調整した結果,計算値と実験値はほぼ一致していることが確認できる.



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