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4. 泥水サーマル



4. 3 実験結果と計算結果との比較・検討(θ=30°)
サーマルの流下速度の流下方向変化
図−14 サーマルの流下速度の流下方向変化

次に,傾斜角30°の実験である福嶋・今田(2000)との比較結果を示す.この場合も粒子総量の流下方向の変化の計算結果が実験結果と一致するように硫酸バリウムの粒径を定めた.この結果Ds = 0.034mm .粒径の違いによって泥水サーマルの諸量がどのように変わるかを確認するため,Ds = 0.05mm の粒径でも計算を行った.また,この傾斜角でも負の浮力が等しい塩水サーマルの計算も行った.

図−14は流下速度の流下方向変化変化のグラフである.実験結果と実線は流下距離50-80cmの区間ではほぼ一致している.しかしその前後の区間ではあまり一致していない.これは計算が想定した初期の流動と実際に実験で生じた流動とが違っていたためと考えられる.流下速度の減少は,塩水サーマルが最も小さく,泥水サーマルでは粒径が大きいほど減少が早いことがわかる.

サーマルの流下速度の流下方向変化
図−15 サーマルの最大厚さの流下方向変化

図−15は最大厚さの流下方向変化のグラフである.最大厚さは流下距離に対し線形的に増加しており,実験と3種類の計算とであまり差が大きくない.図−11の傾斜角10°の場合と比較すると,この図のほうが最大厚さの増加率が大きい.これはBeghinら(1981)の塩水サーマルの実験結果と一致する.

サーマルの流下速度の流下方向変化
図−16 サーマルの最大濃度の流下方向変化

図−16は最大濃度の流下方向変化のグラフである.横軸,縦軸は図−7と同じように基準化した.θ = 30°の場合もθ = 10°と同様,粒子の沈降性のため,基準化した最大濃度は粒径が大きいほど無次元距離に対して早く減少する.図−12θ = 10°と比較すると,塩水サーマルではθ = 30°のほうが濃度の減少は小さい.これは傾斜角が大きいほど流下速度が大きく,速く流下するため沈降の影響が小さくあらわれるためと考えられる.また,流下速度が大きいことことで乱れが大きく,底面付近で粒子が再浮上する効果も加わっていると推定される.
サーマルの流下速度の流下方向変化
図−17 サーマルの浮遊粒子総量の流下方向変化

図−17は粒子総量の流下距離に対する変化である.粒径が大きいほど沈降速度が大きくなるため,総量が大きく減少する.また,図−13θ = 10°の場合に比べて,粒径が大きいDs = 0.05mm でも総量はあまり減少しないことがわかる.



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