6.4 運動量輸送の効果の構造について

5.1節において、固有モードによる運動量輸送の構造(図23)が実際の平均流加速の構造とは逆向きであることが分かった。ここでは、運動量輸送の構造について考察する。

Hathaway & Somerville(1987)[2]の平均流加速メカニズムの模式図(図43(左))では、水平流速がコリオリ力によってロールの軸にほぼ平行に曲げられ、運動量輸送がジェットの中心に集中する構造をしている。しかし、本研究の図37や図38を見ると、確かに水平流速はコリオリ力によって曲げられているが、ロールの軸に対しておよそ40$ ^{\circ}$〜50$ ^{\circ}$の角度を残している。この様子を図43(右)に模式的に表した。この図のように、実際には運動量は$ x<0$の領域から$ x>0$の領域へと輸送され、その結果、$ x<0$側で減速、$ x>0$側で加速される。図44は運動量輸送による平均流加速($ \protect{-\partial /\partial x\overline{(u'v')}}$ : 式(16)の鉛直平均前の量)の$ x$-$ z$分布である。ロールの軸の傾きに併せて加速・減速域も傾いているが、鉛直平均するとやはり$ x<0$側で減速、$ x>0$側で加速という図23の分布になる。

コリオリ力による水平流速の曲げの角度は$ Ta$に依存するが、鉛直平均すると加速の構造に大きな違いは見られない。


図43: 運動量輸送の模式図。黒線: 上面での上昇域(または下面での下降域; どちらも
吹き出し)の中心線、赤矢印: 水平流速ベクトル$ {(u,v)}$青矢印: 運動量フラックス。
(左): Hathaway & Somerville(1987)、(右): 本研究。
\includegraphics[scale=1.]{img2/momentum2.eps} \includegraphics[scale=1.]{img2/momentum.eps}




図44: 運動量輸送の効果による平均流加速の$ {x}$-$ {z}$分布(: 加速、: 減速)。
この分布の鉛直平均が図23と対応。(上): $ {Ta=10^5}$、(下): $ {Ta=3\times 10^4}$
\begin{figure}\begin{center}
\protect\includegraphics[trim=290 55 100 35,clip,sc...
...6]{img2/ph15-f173-M7-uv.ps}
\end{center}\begin{center}\end{center}\end{figure}

SAITO Naoaki
2009-07-09