の場合の方がの場合よりも平均流の加速が大きくなる要因について考察する。図39と図40にロール状対流の-断面を示したが、その各断面での鉛直流速の絶対値の最大値を表1に示した。これを見ると、先程述べたの場合のロールの流速の局在だけでなく、の領域のロールの鉛直流に比べての領域のロールの鉛直流の方が強いことが分かる。これは齊藤 & 石岡(2008)[5]でも述べられているように、の領域の方がの領域よりも慣性的に安定性が低いためと考えられる。実際、の領域のロールの鉛直流速に対するの領域のロールの鉛直流速の比はの場合よりもの場合の方が小さい(表1の括弧内の数字)。これは、の場合の方がの場合よりも系の回転が弱いため平均流の水平シアの影響を強く受けるためと考えられる。
8.438 | 0.317 (0.800) | 0.098 (0.715) |
9.219 | 0.750 (0.951) | 0.566 (0.871) |
0.000 | 1.000 | 1.000 |
0.781 | 0.789 | 0.650 |
1.562 | 0.396 | 0.137 |
このように側のロールの鉛直流が強く、さらにロールの軸は回転軸に沿うように傾いているため、擾乱による熱輸送が生成する上下の浮力偏差は、上側の偏差の方が下側の偏差よりも大きくなる(図42(左))。この様子は図31(の場合は図33)の一番上の図で確認できる(上側の浮力偏差の方が等温線の本数が1本多い)。もし上下の浮力偏差の大きさが全く同じであるならば、それらによって生成される二次的な鉛直流の和の鉛直平均を表す図28(の場合は図30)の青線の形は原点に関して点対称になるはずである。しかし、上側の浮力偏差の方が大きくなると、二次的な鉛直流への寄与も上側の浮力偏差の方が大きく(図42(右))、におけるは正となり、青線の位相は原点対称な位置から右(の正)方向にずれる。図28と図30の青線を見比べると、側のロールの鉛直流がの場合よりも強く上側の浮力偏差がより大きいの場合の方が、青線の正のピークがよりに近い。このことがの場合との場合の平均流の加速の差に効くと考えられる。
SAITO Naoaki