4. 結果

4.1 不安定な楕円渦の時間発展
4.2 楕円渦の変形に関する流線の解析
4.3 パッシブコンターによる流体混合の可視化
4.4 流体塊の変形に関する有限時間リアプノフ解析
4.5 パッシブコンター移流によるリアプノフ解析の確認


4.3 パッシブコンターによる流体混合の可視化

渦度ジャンプのある場所以外での流体の動きを調べるために、 パッシブコンターを移流させて移流・混合の具体的な イメージをつかむことにする。

任意の場所の速度 u ( x,y,t )式(2.11)で与えられるので、 これより任意の場所においたコンターを移流させることができる。 渦度ジャンプのコンターのように速度場に影響を与えることがないので、 受動的な(パッシブ)コンターである。

初期条件は、以下のように与える。

楕円渦パッチ: 4.1節の例と同じ(太線)。
パッシブコンター(内側): 相似の楕円で長径を0.1ずつ小さくしたもの(青から青白色)。
パッシブコンター(外側): 相似の楕円で長径を0.3ずつ大きくしたもの(青から緑、黄、赤)。

アニメーション2: パッシブコンターの移流(GIF animation; 1990kB)。
それぞれのコンターの位置を t = 0.0 から t = 10.0 まで0.1 おきに示す。 初期に y < 0 にある流体にはうすい青色をつける。

・ パッシブコンターを見ると、 渦度ジャンプのコンターのみに注目していると気づかない 周囲の流れが鮮明になっている。

・ 楕円渦が形を保って回転している間にも、周囲の流体は変形を受ける。 とくに楕円の長軸の先端では周囲の流体をひきずって伸ばす様子が見られる。

4.2節において見た回転系での よどみ点を含む流線に沿って、流体塊のひき伸ばしが起きている。

・ ストリーマーが生じた後は、さらに複雑な流体混合パターンとなる。 随所にひき伸ばしと折りたたみの兆候を認めることができる。

・ 伸びの状況は、これらのパッシブコンターの長さの時間変化としても認識できる。 (非発散なのでコンターに囲まれた領域の面積は保存されていることに注意。)

図3: パッシブコンターの長さの時間変化(クリックすると拡大画像を表示)。

・ 楕円渦の内部においたパッシブコンターはほとんど伸びない。

・ 渦のすぐ外側では、初期段階においてほぼ一定の割合で伸びている。

・ さらにストリーマーが出現して複雑な流れ場となる t = 6.0 以降には伸び率が大きくなる。

・ このようなパッシブコンターのひき伸ばしは、 楕円渦の長軸を直径とする円のすぐ外側までしか見られず、 それよりも外側ではコンターの長さはあまり変化しない。


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