図12 は 速度 V0*の表式
(23) の実験値と理論値を比べたものである.
すでに, 図9 で運動方程式の各項の高さ分布については詳しく見た. この図は, コリオリ項と圧力傾度項を比較したものにほぼ対応する. 図11 で見たように内部温度差は Ta によらずほぼ一定である. このことより, 理論値(右辺)は Ta が大きくなると急速に小さくなっている. 一方, 実験値は, Ta が小さい間は, 右辺とは逆に Ta が大きくなるにつれて逆に大きくなっている. Ra = 104, 105 の場合には Ta = 104 まで, Ra = 106, 107 の場合には Ta = 106 までは, 右辺は Ta とともに大きくなる. ただし, Ta = 106 のときは流れが乱流的であり, セル数の定義に不定性を伴うので, 図12 の実験値のグラフで見られる極大値はあまり信用をおくべきではない. Ta が極大となる領域を越えると, V0* は逆に減少し, 実験値は理論値とほぼ同じ値になることがわかる. 一般に Ta が小さい場合には, 回転効果が弱いために通常の非回転系のベナール対流と同様に V0* は小さい. Ta が増す程, 回転の効果が強まり V0* は大きくなる. このような領域は粘性・慣性レジームにあるといってよいだろう. さらに Ta が増すと, 地衡風レジームに入り, Sakai が導いたように回転とともに V0* は小さくなると考えられる. 粘性・慣性レジームから地衡風レジームへ移行は, Ra = 104, 105 のとき Ta = 104 付近で, Ra = 106, 107 のとき Ta = 106 付近で生じていると考えられる. |
図12. 速度 V0* の比較. 赤線は実験値, 青線は理論値. |