粉体層上の動摩擦係数測定実験とその流体力学的考察

比較実験の結果

比較実験について、条件および得られた動摩擦係数を表2にまとめる。結果として、射出直後の速度と射出から停止までの時間から求めた動摩擦係数(以降、m* と略す)を記した。また、主要な結果 2 で確認された段階的な速度変化が認められたケースについては、滑走状態Bにおける摩擦係数(以降、mB と略す)も記した。ただし、主要な結果を得た実験は3月に行い、この比較実験は7月に行った為、日中の平均気温・湿度が異なる。実験中の気温および湿度の平均はそれぞれ3月: 9.3℃ / 45%、7月 : 28.8℃ / 48.9%であった(京都地方気象台地上気象観測原簿による)。この気温・湿度の影響を除くため、条件 I の結果としては7月に行った実験のデータのみ記した。

円盤の底面状態の比較から滑らかな金属表面ではすぐ止まる(動摩擦係数が高い)のに対して、スプレー糊で小麦粉を貼り付けたようなざらついた底面の円盤の方がよく滑るという一見矛盾した結果を得た。

また結果全体から

  1. 粉体が圧縮されていない
  2. 底面に粉体付着加工(S)を施す

場合に、段階的な速度変化が認められ、動摩擦係数が低い滑走状態Bが存在する、といえる。

また、粉体層の底部、すなわち滑走板の上面の状態は、滑走に影響を及ぼさないことが分かった。

表2:比較実験の条件・結果一覧。注目すべき条件を強調して示してある。円盤は直径140mm、質量1.01kgのものを用いた。底面状態における記号の意味は以下の通りである。
  S:滑走で用いる粉体をスプレー糊でつけ乾かしたもの
  M:滑らかな金属表面のもの

粉体 粉体の圧縮 底面状態 粉体層の下部 mB m*

条件 I 小麦粉 非圧縮 S ベニア板 0.11-0.15 0.20

条件
II-1
片栗粉 非圧縮 S ベニア板 0.072-0.078 0.11, 0.14
ケイ砂 - S ベニア板 0.61-0.73

 条件
II-2
小麦粉 圧縮 S ベニア板 0.74-1.4
片栗粉 圧縮 S ベニア板 0.052-0.33

条件
II-3
小麦粉 非圧縮 M ベニア板 1.24-1.53
片栗粉 非圧縮 M ベニア板 0.064, 0.11 0.16, 0.33
ケイ砂 - M ベニア板 0.39-0.72

条件
II-4
小麦粉 非圧縮 S トタン板 0.12-0.16 0.19, 0.20


粉体層上の動摩擦係数測定実験とその流体力学的考察