3. 結果

3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 3.e. 平衡状態の変化(降水分布) g. 暴走限界はどのようにして決まるのか?(成層圏モデルとの対応)

f. 暴走温室状態

ここでは, 実験 S1800 の結果を示し暴走温室状態における大気の振舞を概観する.

既に述べたように, 暴走温室状態が発生すると 大気は平衡に達することができない. 表面温度は上昇を続け, 大気中の水蒸気量, 大気の全量は増加を続けていく. 地表面から蒸発した水蒸気のうち 約 7 割が凝結し大気を加熱し, 残りの 3 割が大気中に水蒸気の形で蓄積される. これらの変化の様子は 全球平均値時間変化, 物理量分布時間変化 を参照されたい.

大気の熱的構造および循環構造に関する特徴としては以下の点が あげられる(図 1 参照).
  • 南北温度差はほとんど消滅する.
    地表面温度についても南北差は 6.5 K と非常に小さくなる.
  • ハドレー循環の背は高くなる.
    ハドレー循環の幅は平衡状態と同じく 約 30 度のままである.

凝結加熱分布, 水蒸気分布, 東西風分布などは 暴走温室状態の子午面構造 で示してある.

図 2 は実験 S1800 におけるエネルギーフラックスの 南北分布を示したものである (エネルギーフラックス分布の詳細に関しては 熱的南北構造を参照のこと). 表面に入射したエネルギーフラックスの大部分が蒸発フラックスとして大気に 与えられることがわかる. 降水分布に関しては, 高緯度における降水が非常に大きいものと なっている. この凝結加熱が大気の南北温度差消失に大きく貢献しているものと 考えられる. 高緯度における多量の降水に対応して, 南北方向の熱輸送 および 擾乱の活動度 も平衡状態に比べると非常に大きなものとなっている.

figure1
図 1: 実験 S1800 における温度子午面分布(K)と 質量流線関数(Kg/sec).

figure 2
図 2: 実験 S1800 におけるエネルギーフラックス南北分布. 青線が凝結熱, 緑線が蒸発フラックス, 赤線が大気上端から射出する放射フラックス(OLR), オレンジ色の線が地表面正味放射フラックス, 水色の線が顕熱フラックスを表す. 単位は W/m2.


上では付録 F の一部を参照した. これは暴走温室状態の大気構造に関する詳細な議論であり そのリストは以下の通りである.


3.f. 暴走温室状態 3 次元灰色大気構造の太陽定数依存性と暴走温室状態 3.e. 平衡状態の変化(降水分布) g. 暴走限界はどのようにして決まるのか?(成層圏モデルとの対応)