b. モデル
用いたモデルは電脳倶楽部版 AGCM である. 基礎方程式は 3 次元のプリミティブ方程式である. モデルの特徴は以下の通りである.
- 空間差分.
水平方向には擬スペクトル法によって球面調和関数で展開する. 鉛直座標は を用い, Arakawa and Suwarez (1983) の方法を用いて差分化する.- 放射過程,
放射は, 放射計算スキームで述べるスキームを 用いて計算する.- 積雲対流.
積雲対流は大規模凝結及び対流調節を用いて評価する. いわゆる浅い積雲対流は考慮しない. 積雲対流のパラメタリゼーションスキームにおいては 通常の大気でモデルで用いられているような水蒸気が少ない: という近似は不適切である. これについては, 水蒸気量が少ないという近似をはずした 湿潤対流調節スキームを用いることにより対処する.- 鉛直乱流拡散.
Mellor and Yamada (1974) の level 2 のモデ ルを用いて評価する.- 地表面フラックス.
地表からの顕熱フラックス及び潜熱フラックスはバルク法によって見積もる.- 蒸発・凝結による質量効果.
太陽定数が増大すると大気中の水蒸気量も増大するので, 蒸発・凝結によって大気量が変化する効果も無視できなくなる. これについては大気コラム全体での相変化量によって 表面気圧に補正を加えるという形で考慮する. その詳細は 蒸発・凝結による表面気圧変化を 参照されたい.- 2-grid noise の処理.
太陽定数が増大すると鉛直方向に 2-grid noise が生じてしまい, 長時間の積分が実行できなくなる. この noise の処理するため 上層の 7 層には 減衰層を導入し, 更に全層にわたって u, v, T に 鉛直方向のフィルターをかけた.- 水平分解能.
水平分解能は, 高気圧・低気圧を表現することができる最低限を選ぶことにし, 全波数 21 の三角形切断(T21)を行った.- 鉛直分解能.
最上層レベルは, とした. 全層を 32 に分割する. このような鉛直レベルを選んだ理由については, 鉛直分解能についての検討を参照されたい.- 数値計算法.
物理過程の項は後退スキーム, 重力波項はsemi-implicite 法, Newton 冷却・レイリー摩擦・水平拡散はEuler スキーム で時間積分を行なう. それ以外はleapfrog スキームにより時間積分する. タイムステップは基本的に 20 分とする. ただし太陽定数が 1600 W/m2 を超えた場合には, タイムステップが 20 分で は長過ぎるので適宜 10 分, 5 分と短くして計算を続行した. 計算モードの除去は Asselin (1972) のタイムフィルターを用いて行った. その係数は 0.1 とした.
上で参照したモデルの細部に関する詳細な記述は次の付録 B に まとめてある. 興味のある方は参照されたい.
鉛直フィルターを導入しない場合の結果は次の付録 D において記述した.